輝き

 若さ=正義みたいな風潮が存在する。私も否定はしない。
しかし、重ねた歳月は人としての「深み」が増す訳で、
引き出しの数が断然違って来るのである。
 巷では「美魔女」なんて揶揄される方々が存在するが、
遡る事30年前くらいまでは、
妙齢を過ぎた女性は見向きもされなかった。

 クリスマスケーキなんて侮蔑語もあって、
25日を過ぎると安売りされるクリスマスケーキと同じく、
25歳を過ぎたら条件を緩くしないと結婚出来ないなんて言われたモンだ。

 現代の生活環境がアンチエイジング化されたのかも知れないが、
40代・50代でも若々しい女性は沢山見かける。
…見かけると言うのは語弊がある。
見知らぬ人の年齢は知る由もないのだから、
正確に言えば職場の同僚。
大概、歳より若く見える人は独身だったりするのだが、
”実年齢より若く見える”化より、晩婚化が顕著なのかも知れない。
正社員で雇用されていれば、結婚して不自由な生活を強いられるよりも、
独身で自由な生活が良いに決まってる。
しかし、美人で独身ってのは、何だか勿体ない気がするが…。

 製造会社であってもそんな感じなので、
販売業ならばもっと「美魔女」だらけと思われがちだが、
就業時間も休日もともに不規則で、それ以外にもストレス要素が多く、
(作業着に運動靴というラフな格好でノーメイクも珍しくない製造業と比較して、
スーツ・ヒール着用・メイクもそれに見合ったモノを長時間強いられる)
着飾っているが、その鎧を脱いだら”お疲れちゃん”が殆ど。
まァでも、今日偶然に前の会社でお世話になった女性っぽい感じのFBページを発見したので、
メッセージを送信してみたら、やはり当人だった。
とても宮根誠司と同級生には見えませんでした。
当人の画像が目元だけ鮮明に映っていたのだが、
「目は口ほどに物を言う」と言われるくらい判断出来てしまい、
ここを隠さないと意味がないってのも思い知らされた。
彼女は韓流に夢中(過去形かも知れんが)なのがミーハー気質の名残りっぽい。
キャリアウーマンを地で行くような職業だったので、
輝きを放つのが本業でしょうから、
多分これからも見た目は変わらないでしょう。
昔の同僚とネット上で再会出来るなんて、SNSは確かに便利なツールだ。
ツイッターと違ってアカウントがニックネーム禁止だから、辿り着きやすいってのも有る。

 仕事を辞めてから20年経ったが、
彼女が私の事を忘れていなかったのも偶然だろうか?
私は記憶の片隅に彼女の事をしまい込んでいた程度だが、
もう二度と会う事も無いだろうと勘繰っていたが、
私がスマホ持ちならば、LINEで遣り取りしてしまうだろう。
SNSでチャットしてるくらいが丁度いい。
お互い傷付くようなトラブルもないだろうし…。



遠ざかる記憶は美化されると言うか、想い出補正が掛かると言われている。
SNSで急に現実世界を垣間見てしまうのが、
果たして良い事なのか・悪い事なのか?
自分にもわからない。
この夜空の下、どこかで今日も誰かと暮らしているに違いないが、
それを知らない方が幸せな場合も有る。
中学時代に好きだった女性の消息は途絶えたままで良い。
彼女に逢いたい一心で、高3の夏休みに駅でずっと待ち伏せしても、
嫌な顔を見せずに途中まで一緒に帰ってくれた。
それまで電車の中で纏わり付いていた野郎とは駅で別れ、
駐輪場に歩いてくる制服姿の彼女。
こっちは自転車、彼女はヤマハのジョグ。
当時はヘルメット着用が義務化されていなかったので、
夏風に靡(なび)く長い髪に見惚れてしまった。
あの夏の日の記憶は、そのままにしておくのが吉だろう。
彼女も私の事を忘れずにいてくれるだろうか…。