ペットロスシンドローム

「ペットロス」
直訳すると「ペットを失う」という意味ですが、
実際には愛しい動物との別れに遭遇した飼い主の悲しみを大きく捉えた言葉として使われます。
世の中には動物を飼ったことも触れ合ったこともない人もいます。
また人と動物との関係に対する認識にも温度差があり、
全ての人がペットを失った悲しみに共感してくれるわけではありません。

 さらにペットロスという概念自体が、一般的に普及していないことも重なり、
ペットロスに苦しむ人を病気という枠組みで捉えられてしまうことすらあります。
時間を共有した動物との別れは私たちが直面する苦痛の中でも最も大きいものであるにもかかわらず、
それを周りに受け止めてもらえないというもうひとつの苦しみを味わうことも現実としてあるのです。

私の家は、物心付いた頃は猫も犬も居なかった。
小学5年の始業式の帰り道に、橋の袂にダンボールに入れて捨てられていた子犬が
あまりに可愛いかったので、家に持ち帰った。
両親は嫌な顔もせず、承諾してくれた。中型だったが、シェパードが入った雑種で、
利口で大人しく、両手を差し出すと後ろ足2本で立つのが好きな犬だった。
ただ、雌だったので(当時は避妊手術は一般的ではなかった)、
春と秋に子犬を産んで増えてしまうので、1年半後に生まれた子犬を残して、
親犬は保険所で処分してしまった。
ところが、その子犬も成長するにつれ、毎夜のように吠え続けるので、
結局、処分してしまった。思えば、散歩に行きたかっただけだったのかも知れない。

それから12年後に、再び犬を飼ったのだが、
やはり散歩に連れて行って欲しくて吠えられるのが嫌で、保健所行き。
綺麗好きの犬は、排泄行為を小屋の周りでしたくないだけだったのに。

そんな経験があったので、自分で犬を飼うのなら絶対に雄にしようと決めていた。
そして、最後まで責任を持って付き合おうと。
真夜中でも吠え続けるようなら、散歩に出かけたし、
家族で海へ出かける時も、午前3時に起きて散歩に連れて行ってからにした。
犬のお陰で、歩くのが苦にならない体になった。

老衰で痩せこけて行く犬を見て、何も判っていない父親が
「ちゃんと餌やってるのか?栄養失調でガリガリじゃネエか」
なんて言うのが腹立たしかった。

ペットロスから立ち直るには、3ヶ月~半年程度かかるらしい。
個人差もあるだろうけど、初めて自分が迎えたペットだったから、
それだけ悲しみも深い訳さ。


クルマを停めて、降り立つと必ず尻尾を振って迎えてくれた。
今、その場所に犬が居ないのが、何とも寂しい事よ。